訪問看護 Sさん

先輩看護師のとっておき看護
『どういう生き方をしたいか』を聴き、その人らしい生活を送ることができるよう支援していく
Main Image
2025.07.23

訪問看護 Sさん 訪問看護

私が訪問看護で大切にしていることは、本人・家族を含めて、『どういう生き方をしたいかを聴くことで、最期にどうしたいかゴールを聴くことにつながる』ということです。これまで意思決定支援の場面で様々な経験をしてきました。具合が悪くなった時に「どうしたいですか?」と聴いても、その時点では選択肢も限られた状態になります。また、ステーション内でも、ご家族不在時に、本人にいざというときの意思確認したことを書類で残していたら、「どうして自分がいない時にそんな話をしたのか。」とお叱りを受けたという話を聞くことがありました。

訪問看護の現場は病院とは異なり、生活に密着しています。また、対象となるのは病気と向き合いながら生活をしている利用者やそれを支援するご家族です。ACPにも積極的に取り組んでいますが、『人生の最終段階にどのような医療・ケアを受けたいか』というような問いかけよりも、冒頭の『どういう生き方をしたいか』というような聞き方をする方が、当事者には受け入れやすく、より本人らしい最期を迎えることにつながるのだと思います。

今回あげた事例は、50代男性で精神疾患・糖尿病を患うA氏が高齢の母親との生活を送る中で、母親のお看取りを迎えられた場面でした。A氏の訪問の内容としては、血糖コントロールがうまく行えているのか、週に一度、30分の訪問で状態の観察をしていました。キーパーソンは母親でしたが、がん末期であり他施設の介入による福祉サービスを受けながらA氏と在宅で過ごすことを望まれており、互いのことを支えあいながら過ごしていました。精神疾患を患うA氏は、それまでも何かあるとストレスを感じてしまったり、20年来のご友人が亡くなったときにもパニックを起こしたことがありました。そのようなA氏が母親の急変時に対応できるのか不安に思い、訪問時には訪問看護の連絡先を伝えたり往診の連絡先を確認するなど、こまめに気にかけ丁寧に声を掛けるようにしていました。母親が亡くなった後、他のスタッフからA氏が自分のことを頼りにしていると言っていたとの話を聞きました。自分としては、日々当たり前のこととして関わっているつもりでしたが、その当たり前が、A氏にとっては心強く感じていただけていたのだなと感じました。

私が利用者やご家族と関わるときに意識していることは、決して看護師がコントロールするのではなく、常に利用者やご家族が中心にいることです。こちらが良かれと思っていても、それが本人たちにとって決して最善ではないことがあるからです。慢性疾患の方の場合には、病院では指導の場面が多くあると思いますが、実際に在宅の場では、いかに指導されたことを本人たちのペースや状況に合わせて継続していくことができるかどうかにかかっているのではないかと思います。その中で私たちの役割としては、『こうしたらよい』と一方的に進めるのではなく、『こうしたら良いのではないか?』と提案をし、本人・家族と一緒に継続可能な方法を見つけ出すこと、またそれができているかモニタリングしていくことだと思います。これからも、『どういう生き方をしたいか』を聴くとともに、利用者・家族の持てる力(ストロングポイント)を見つけて、その人らしい生活を送ることができるよう支援していきたいと思います。