病院外来主任 Hさん

先輩看護師のとっておき看護
心に残る「ありがとう」から学んだこと
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2025.06.12

病院外来主任 Hさん 病院外来

私のとっておきエピソードは、外来で採血した際に、患者様より、久々に心に染みる「ありがとう」を言われたことです。

患者は安静臥床採血の指示があり、自分が担当することになりました。その際に、外来化学療法に通院している方であることに気が付き、採血中に体調など具合はどうかと会話をしていました。これまでの治療経過では、安静にしていないと血圧が落ち着かないこともあり、血圧が高く化学療法の開始が遅れることもありました。また、内服が調整されていたことも知っていたため、採血後にバイタルサインを測定し血圧が落ち着いていたことを共に喜び、「化学療法室のスタッフも安心しますよ。今日はスムーズに治療開始できるかもしれませんね。」などと声をかけました。

帰り際、患者様より「看護婦さん優しいな。どうしてそんなに優しいの?ありがとね。」とのお声がけをいただきました。その時、心に染みる「ありがとう」を久々に言われた気がしました。

昨年度より化学療法室で勤務することが増えました。始めは、自分自身の経験や、身内に起きたことを思い出すため化学療法室の勤務に入ることに強い抵抗を感じていました。しかし、今回のケースのように化学療法室で勤務するようになり、外来で関わっているだけでは知り得なかった患者の状況や様子を知ることが、外来でも継続して看護することにつながっているのだと気が付くことができました。

現在、私のほかにも数名の外来看護師が化学療法室で治療に携わっています。以前までは外来看護師はバイタルサインを測定し、化学療法室に送り出すだけで、業務的であり、そこには患者様の個別性を捉えた関わり方は出来ていなかったように思います。しかし、現在では化学療法を受ける患者様の状況を知っている看護師が増え、情報の共有ができるようになり、看護師がかける言葉の一つ一つが患者様のことを思い、患者様の気持ちに寄り添った声かけに変わってきたように思うし、看護を実感できるようになりました。

そして、何より、私だからこそできることもあると感じています。化学療法を受ける患者の気持ち、家族の思いを十分に理解しているからこそ言えることもあります。化学療法を受ける患者様の中には、本当にギリギリのところで治療に向き合っている方もいます。時には中止になることもありますが、『せっかく病院に来たのだから(化学療法を)やりたい』という思いはとても共感できます。私は、看護師としての意見を伝えるが、その内面では同じように治療を経験したからこそわかる思いも、その言葉に載せています。一見何もないように見えても、実際に患者様の内面には様々な思いがあります。そのような思いに気づき、患者様に関心をもってプラスαの声をかけることで患者様もこちらを認識してくれるようになります。だからこそ、冒頭の言葉をいただくことができたのではないかと思います。

私が大切にしている「想い」「看護観」は、『子供たちに恥じない看護師として働く母でありたい』ことです。また、患者に寄り添うことができるよう、自身の経験が辛いだけではなく糧になる出来事であったと想いたいです。そして、ふとした患者様の「ありがとう」を、ありがたく思える看護師でありたいし、これからも、それをバネに頑張れる自分でありたいと思います。