3南病棟所属 Kさん



3南病棟所属 Kさん 3南病棟
私のとっておきは、卵巣粘液性癌でがん性腹膜炎を併発しターミナル期にある患者との関わりを通して、自身の看護観に沿った看護を実践できたことです。
患者は30代女性。20代で卵巣摘出術を受け、その後卵巣粘液性癌を患った方でした。他院で治療を受けていましたが痛みのコントロールがうまくいかず、当院で治療を受けることになりました。当院では疼痛緩和がうまくいき、調子が良ければ介助でシャワーに入ることもできており、ゴールデンウィーク明けに在宅に帰る方向となっていました。
しかし、ゴールデンウィーク前に容体は悪化し、胸腔穿刺や腹腔穿刺、輸血療法などの治療が行われていました。自宅は遠方でしたが、母親が毎日面会に来られ、「家に帰してあげたい」との思いが強く、在宅で看取ることとなりました。
私は、少しでも本人の不安や苦痛緩和になればよいと思い、フットマッサージやシャンプー、背部マッサージなどを行うと同時に、患者の思いを聴いたりタッチングで安心感を与えるよう関わりました。また、毎日母親が面会に来られていたこともあり、一緒にケアを行うこともありました。
退院するころには1週間もつがどうかと言われていましたが、3~4週間後に再び腹水コントロールのため1泊2日で入院されることとなりました。入院した際に、母親から、「教えてもらった臥床でのシャンプーをしたら喜んでいました。2人でとても良い雰囲気で、『教えてもらって良かった」と話をしていた。』とお話を聞くことができました。また、入院中も母親と一緒に体を拭いたりマッサージをすることで、本人の思いを聴くことができたり、笑顔も見ることができました。在宅にいる間には、主治医が患者を訪問しており、その時にも、患者や家族から「シャンプーを教えてもらって良かった」と話されていたことを教えてもらいました。
私は看護師として、看護で患者の不安や苦痛を少しでも和らげたいと思い、『手で触れて観察をする』ことを大切にしています。痛くて苦しいとき、手を使ってぬくもりを感じてもらうことで苦痛や痛みの軽減につながると考えています。以前は蒸しタオルにハッカ油を入れ、保温庫で温めて使用していたこともありますが、たとえ風呂に入れなくても、そのタオルで全身を包みマッサージをすることで患者は爽快感を感じて喜び、そのケアの最中には患者も表情が和らいで、痛みも緩和されよく話をしてくれていました。
日々業務に追われる中では、なかなか自分の思う看護を実践する場面が少なくなってきていますが、学生指導を通して自分の看護に対する思いは伝わっているのだと実感することもありました。実習終了時アンケートの中で、「今患者さんにとっての苦痛は何か、何を望み、何を目指すのか、ケアをこなすのではなく、患者さんを軸にして『患者さんにとって』と考える大切さを学びました」と書かれていました。まさに、自分が大切にしてきたことであり、それがつながっていることに喜びを感じた瞬間でした。
私は、ただバイタルサインを測定したり、清拭をするのではなく、その中で自分の大切にしている看護を実践するよう心掛けています。残された人生をその人らしく過ごすことができるよう、少しでも時間を作っていろいろな方法でタッチングを行い、これからも患者の不安や苦痛を緩和していきたいと考えています。